ヴェロ細胞技術について
-細胞培養によるワクチン製造-
ファクトシート

バクスターは、鶏卵を使用せず、細胞培養によりインフルエンザワクチンを製造する、ヴェロ細胞技術を有しています。ヴェロ細胞技術は、従来の鶏卵を用いた方法に比べ、製造期間を半分にまで短縮させることが可能です。鳥インフルエンザなどの新たなパンデミックに際し、ヴェロ細胞技術を活用した公衆衛生への対応が期待されます。

従来の製造方法との比較

従来の鶏卵を用いた方法に比べ、細胞培養によるワクチン製造は、さまざまな利点をもたらします。

過去50年近くの間、インフルエンザワクチンの大半は、年間何億個もの孵化鶏卵を用いて製造されています。鳥類から発生したパンデミックウイルスにより、雌鳥や胚が死亡した場合や雌鳥の処分が必要となった場合、鶏卵の調達が困難となる可能性があります。それに対して、バクスターのヴェロ細胞技術のように、細胞培養によるワクチン製造においては、鶏卵に依存することなく、より短時間でワクチンを製造することができます。

鶏卵を用いたワクチン製造の場合、胚を破壊することなく確実にウイルスを鶏卵内で増殖させるために、ウイルスの修飾、すなわち弱毒化が必要となります。ウイルスの修飾には時間を要しますが、自然界に存在する「野生型」のウイルスは、急速に胚を破壊するため、弱毒化する必要があります。また、この方法では少量のワクチンしか製造することができません。それに対して、細胞培養によるワクチン製造においては、ウイルスを弱毒化する必要がなく、約12週間でワクチンを出荷することが可能となります。約24週間かかる鶏卵を用いたワクチン製造に比べると、製造期間が著しく短縮されます。

ヴェロ細胞技術による製造プロセス

バクスターのヴェロ細胞技術では、アフリカミドリザルの腎臓細胞由来の細胞株を用いています。この細胞から連続継代性細胞株が得られるため、動物から新たに細胞を採取することなく、安定的に細胞を得ることができます。

ヴェロ細胞技術によるワクチン製造では、まず、シードウイルスまたはスターターウイルスの凍結バイアルを解凍し、それを大型のバイオリアクターに注入して、ウイルスを増殖させます。つぎに、ウイルスをバイオリアクターから回収し、不活化し、精製します。そして、品質検査を行った後、製剤化し、バイアルまたはシリンジに充填します。バクスターは、「野生型」(または天然)のウイルスを直接、ヴェロ細胞に増殖させることにより、製造期間を短縮することに成功しています。

「野生型」のウイルスの活用は非常に重要です。遺伝子組換え型のウイルス株とは対照的に、バクスターは、自然界に存在するウイルスを修飾せずにそのまま活用することができ、それにより、実在するウイルスにより適したワクチンを開発することができるからです。

ヴェロ細胞技術では、動物由来の血清を一切添加することなく、インフルエンザウイルスを高収率で生産することができます。ヴェロ細胞技術によるワクチン製造は、製造期間が短く、原料の制約をともなわないため、新たなワクチン製剤が必要となるウイルス株の急速な変異にも対応することが可能です。また、全人口の約4%はニワトリまたは鶏卵にアレルギーを持っており、鶏卵を用いて製造されたワクチンの接種を受けられない可能性があります。

バクスターはこれまで、主として不活化された「野生型」のホールウイルス(whole virus)を用いた、ワクチンの開発を行っており、H5N1型インフルエンザ(鳥インフルエンザ)、SARS、その他の新型インフルエンザなど、既知または新興のパンデミックに対応することができます。また、パンデミック対策を推進する世界各国の保健当局からも、大きな関心が寄せられています。

細胞培養によるインフルエンザワクチン開発における
リーディングカンパニー

ポリオや狂犬病などに対するワクチンの製造に細胞培養技術を用いている企業は数社あります。しかし、細胞培養によるインフルエンザワクチンの開発は、多くの場合、その初期段階にあります。

バクスターは、世界有数の商業規模の細胞培養による新型インフルエンザワクチンの製造施設を有するメーカーです。チェコ共和国のボフミル(Bohumil)にあるバクスターの製造施設は、生物学的安全性レベル3(BioSafety Level III)の認証を得ています。同施設では、ワクチンの規格、用量、およびウイルス株の収率によりますが、年間最大1億回投与分のパンデミックワクチンを製造することが可能です。また、オーストリアのオルト(Orth)にあるパイロットプラントでは、臨床試験用の少量のヴェロ細胞ワクチンを製造することができます。

パンデミック対策への取り組みについて

バクスターは、積極的にワクチンの開発を進める一方で、世界各国のパンデミック対策に協力しています。バクスターは既に、数百万回投与分のH5N1型インフルエンザワクチンを複数国に納品しています。また、ワクチンの備蓄契約または事前購入契約を、複数国の政府や保健省と結んでいます。

パンデミックインフルエンザと
季節性インフルエンザの違い

毎年予想可能な季節の傾向によって発生する季節性インフルエンザとは異なり、パンデミックインフルエンザが発生することはごくまれです。しかし、パンデミックインフルエンザが発生した場合、それに対する免疫がないため、非常に多くの人が罹患します。一般的に、季節性インフルエンザの場合、健康成人における重篤な合併症のリスクは高くありませんが、パンデミックインフルエンザの場合、重篤な合併症のリスクをともなうと考えられます。専門家によると、パンデミックインフルエンザによる死者数は、季節性インフルエンザによる年間平均死者数の15倍以上におよぶと推計されています。

出典:Pandemicflu.gov

バクスターのワクチン開発について

バクスターは、10年以上の間、感染症治療の開発に取り組んでいます。ダニまたは蚊媒介性疾患や髄膜炎菌性疾患に対するウイルス性または細菌性ワクチン、パンデミックおよび季節性インフルエンザワクチンを中心とした、ワクチンの開発および製品化を行っています。



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サステナビリティ